マネジメントオフィスの設置
マネジメントオフィスとは、営業活動を行うための営業所のことを言います。
ラブアン法人設立の段階では、営業所の設置は任意とされており、必ずしも開設する要件はありませんが、就労ビザの取得を希望される場合は、ビザ取得日から30日以内にマネジメントオフィス(営業所)の設置が義務付けられています。
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マネジメントオフィスの設置が義務付けられている事業者 | |
属性 | 取締役が就労ビザの発給を受けたラブアン法人 |
ライセンス保有法人(銀行、証券会社、信託会社など) |
※2018年ラブアン事業活動法の施行により、ラブアン法人をはじめとする全ての事業体は実体要件として、ラブアン島内にオフィスを設置することが期待されています。ラブアン島内に事業所を設置しないラブアン法人は、マレーシア本土の税制(24%)が適用されますので、ご注意ください(マレーシア本土-ラブアン間のCFCルールが適用されます)。
また、西マレーシアにマーケティングオフィスの開設を希望する場合も、その前提としてマネジメントオフィスの設置が必要となります(※参考「マーケティングオフィスの設置」)。
なお、法人登録が完了した時点では、書面上の法人格を取得したにすぎず(いわゆる「ペーパーカンパニー」の状態)、多くの事業者の方にとってはマネジメントオフィスの開設が重要な課題になると考えられます。
マネジメントオフィス開設の検討にあたり、以下の点に留意する必要があります。
マレーシア本土との租税条約
ラブアンはマレーシア連邦に帰属していることから、マレーシア本土との租税条約を考慮する必要があります。
ラブアンはマレーシア連邦に帰属しますが、税制についてはマレーシア本土とは異なる1国2制度が採用されています(例として香港法人が中国本土と取引する際の租税関係と同様です)。
マレーシア連邦の租税要件として、「ラブアンを通して請求した売上、及びラブアン内で発生した売上げについては、ラブアン法人法の税率が適用される」と定められています。
たとえば、①「ラブアン島内に営業所を構えず」に②「ラブアン法人の就労ビザ」で③「クアラルンプールに居住」し④「インターネット上でマレーシア国外に向けてビジネスを行う」事例について検証してみます。
たしかに上記の事例では、ラブアン法人を設立後、ラブアン就労ビザを取得し、クアラルンプールに居住しながら、諸外国との間で事業取引(この場合はオフショア取引)を行っています。これはラブアン法に定められた範囲で合法的な事業取引を行っています。
しかしながら、マネジメントオフィスを設置せずにインターネット上でラブアン法人の事業取引を遠隔操作してしまうと、場合によっては「マレーシア法人による商取引である」とみなされ、マレーシア本土の税率(24%)が適用されてしまう可能性が少なからずあります(この点は、一国二制度の恩恵を享受し、マレーシア本土に居住できてしまう制度ゆえの特有の問題でもあります)。
ゆえに上記の事例の場合、ラブアン法人法に準拠する税率(3%)ではなく、マレーシア本土の法人税率(24%)が適用されてしまうため、マレーシア本土―ラブアン間の租税回避行為が無効と判断され、結果としてマレーシア本土側で合算課税されてしまう可能性があります。
これでは、マレーシア本土との租税条約の要件がクリアできなくなってしまい、多大な労力と経費を支払い、ラブアン法人を設立し、運営するメリットが大幅に低減してしまいます。
上記は国際税務のルール上、CFCルールの概念を援用していると考えられ、実体要件を満たすためにラブアン島内にマネジメントオフィスの設置を要求しているものです。そのため、2015年2月のガイドライン改正によって、全ての就労ビザ付帯法人にマネジメントオフィスの設置を義務付けたと解釈することができます。
さらには2019年4月のガイドライン改正によって、全ての事業活動を行うラブアン法人には、最低要件としてマネジメントオフィスの設置が義務付けられました。
そのため、マレーシア本土との間に生じる法令リスクを回避する観点、さらには諸外国とのCFCルールの観点からも、全てのラブアン法人及び事業体はマネジメントオフィスの開設を十分検討する余地があると考えられます。
※一般的な感覚からは理解が難しいですが、ラブアンはマレーシアに帰属するものの、外国(マレーシア国内のタックスヘイブン)としてみなされると考えてください。
※上記の事例はマレーシアに限らず、一般的な国際税務の基本ルールとして検証しています。