ラブアン就労ビザ発給に関するガイドライン(2019年4月2日発行)

2019年4月のガイドライン改正により、ラブアン法人設立時に就労ビザを申請する場合、いくつかの要件が変更されました(旧ガイドラインについては「ラブアン就労ビザ発給に関するガイドライン(2015年2月発行)」をご参照ください)。

主な変更要件は以下のとおりです(※就労ビザの申請が不要であれば、以下の要件は全て不要となります)。

就労ビザの申請要件 1. 250,000RM相当(USドル換算)以上の資本金で法人登記を行うこと(5-1.

→ 当該要件は廃止、最低資本金要件は撤廃されました。

2. 取締役の給料を月額10,000RM以上に規定すること(5-4.

→ 当該要件は継続、引き続き新ガイドライン5-1.に記載されています

3.事業計画書(英文)と申請者の職務経歴書(英文)を提出すること(6-2-1.

→ 当該要件は継続、新ガイドライン6-3-1.に記載されています。なお、事務手続簡素化のため、事業計画内容に変更があった場合のみ更新時に再提出が必要となります。

4. 就労ビザ取得後に、ラブアン島内に営業所を設置すること(7-2-1.

→ 当該要件は継続、新ガイドライン6-3-1.に記載されています。原文が「The company’s/employer’s address must be the operational office, co-located office or marketing office in Labuan or Malaysia as per the respective guidelines issued by Labuan FSA.」と書かれていることから、「会社/雇用主の住所については、Labuan FSAが発行するそれぞれのガイドラインにしたがい、ラブアン又はマレーシアのマメジメントオフィス、共同オフィス、又はマーケティングオフィスでなければならない」という解釈になります。

→ ここで、マーケティングオフィスとは西マレーシアに設置するための駐在員事務所のことをいいますが、マーケティングオフィスを設置するためには、そもそもラブアン島内にマネジメントオフィスの設置が義務付けられています(参考:「マーケティングオフィスの設置」)。このことからマーケティングオフィス単体の設置はできないという解釈が可能になると考えます。

5. 西マレーシアにマーケティングオフィスを設置すること(7-2-2.

→ 当該要件は判断が不可、上述した4.より、マーケティングオフィスの設置義務は廃止されたと解釈することが可能かと考えます。

1. 250,000RM相当(USドル換算)以上の資本金で法人登記を行うこと(5-1.
ラブアン法人設立後に就労ビザを申請される方は、資本金の設定を25万リンギット相当(USドル換算)以上に設定し、法人口座に払い込みをしていただく必要がありますのでご注意ください。

なお、資本金(設立時点でのUSドル建て為替レートが適用されます)については、株主の方から「法人口座開設後、すみやかに払い込みを行う」旨の文言を書面として提出していただく必要があります。

そのため、一時的には必ず口座に入金していただき、その後は商取引や投資目的でご利用いただくといった方法が帳簿上矛盾が生じないため、会計監査もスムーズです。

※上記資本金規定は、就労ビザの申請要件のため、就労ビザの取得が不要であれば資本金要件は不要となります。

2. 取締役の給料を月額10,000RM以上に規定すること(5-1.
ラブアン法人設立後に就労ビザを申請される方は、取締役の給料を月額1万リンギット以上に規定する必要がありますのでご注意ください。

現在、ラブアン法人の役員の租税優遇措置には2つの形態があります。

所得の種類 属性 租税優遇措置
取締役の個人所得 給与所得 国内源泉所得 50%が免税 → 撤廃
役員報酬 国内源泉所得 全額非課税 → 撤廃、給与に合算合算課税

これまで役員報酬として受け取ることにより非課税特権を享受できたラブアン法人の個人所得でしたが、追加された就労ビザの申請要件では「Director Fee=役員報酬」ではなく「Salary=雇用者として受け取る給料」として月額1万リンギットと規定されてしまったため、これからは年間12万リンギットまでは所得税が課税されることになります(50%が免税となるため、実際には6万リンギットが課税対象となり、累進課税分が最低限課税されます)。注意:給与要件の50%免税要件は2020年を持って廃止となり、今後は給与額面100%に対して累進課税となります。

重要:「ラブアン法人取締役の給与・役員報酬に関する規定」)

また、12万リンギットを超える収入については、従来通り株主配当として受け取ることにより非課税扱いとなります(役員報酬については、法令上非課税という明確な規定は存在しません。特に一人株主・一人取締役の会社では取締役がオペレーションを行うことになるため、給与としてみなされるリスクが伴います。所得税法法上、株主配当は非課税と記載されているため、こちらを選択することをおすすめします)。

※上記給与規定は、就労ビザの申請要件のため、就労ビザの取得が不要であれば上記給与規定は不要となります。そもそもラブアン法人の取締役であっても、マレーシア国内への長期滞在が不要であれば就労ビザの取得は必要ありません(マレーシア国内で長期滞在が必要、就業が必要な方のみ就労ビザが必要です)。

※上記給与規定は、就労ビザの申請要件のため、就労ビザを保有しない取締役への給与支払いは任意規定となり、支払い義務はありません(給料規定が無くても取締役に就任することは可能です)。

(参考:「Inland Revenue Board Of Malaysia」)

3.事業計画書(英文)を提出すること(6-3-1.
ラブアン法人設立後に就労ビザを申請される方は、就労ビザ申請時に以下の内容を記載した事業計画書の提出が必要となります。

なお、事務手続簡素化のため、事業計画内容に変更があった場合のみ更新時に再提出が必要となります。

事業計画書に記載すべき必須事項 a. 事業内容
b. 組織図
c. 申請者の職務内容

※上記事業計画書の提出は、就労ビザの申請要件のため、就労ビザの取得が不要であれば事業計画書の提出は不要となります。

4. 就労ビザ取得後に、ラブアン島内に営業所を設置すること(7-2-1.
ラブアン法人設立後に就労ビザを申請される方は、就労ビザ取得後にラブアン島内にて営業所の設置が義務づけられました(参考:「マネジメントオフィスの設置」)。なお、営業所の設置は就労ビザの申請段階でご契約いただく必要はありません。

弊社ではラブアン島内に、いくつか格安で契約可能なオフィス物件をご紹介することが可能となっておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

※上記営業所設置規定は、就労ビザの申請要件のため、就労ビザの取得が不要であれば営業所設置要件は不要となります。

5. 西マレーシアにマーケティングオフィスを設置すること(7-2-2.
ラブアン法人設立後に就労ビザを申請される方は、ラブアン島内にて営業所の設置後、クアラルンプール又はイスカンダル地域(ジョホールバル)にマーケティングオフィスの設置が義務づけられました(参考:「マーケティングオフィスの設置」)。

※マーケティングオフィスを設置するためには、ラブアン島内にて営業所を設置することが義務付けられています。

なお、マーケティングオフィスの設置如何を問わず、ラブアン島内にレジデンスアドレス(居住住所)を有していれば、西マレーシアに居住することは可能となります。 → ラブアン島内のレジデンスアドレス(居住住所)の設置要件も撤廃されました。

実務上の運用は以下のとおりとなります。

例 : ラブアン就労ビザでクアラルンプールに居住する場合
ラブアン島内に営業所・居住住所有 → マーケティングオフィスの設置は不要
ラブアン島内に営業所・居住住所無 → マーケティングオフィスの設置が必要

※ラブアンに居住住所を有していない場合は、ラブアン当局へクアラルンプールの居住住所の届出が必要となります。

※上記マーケティングオフィス設置規定は、就労ビザの申請要件のため、就労ビザの取得が不要であればマーケティングオフィス設置要件は不要となります。

※就労ビザの取得が必要であっても、ラブアン島内に居住する場合はマーケティングオフィスの設置は不要となります。

(参考:「GUIDELINES ON WORK PERMIT APPLICATION IN LABUAN IBFC FOR LICENSED AND NON-LICENSED ENTITIES」)